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ブルースモーク
神の名を語るのは

神の名を語るのは

・推奨人数:3~4人
・プレイ時間:4~6時間
・推奨技能:目星、聞き耳、図書館、戦闘技能

■諸注意
 本作はラヴクラフト作品の要素を幾つか組み込んでいる。読むと世界観が把握しやすい。特に『ダゴン』の主人公が展開の軸となっていることもあり、一読を強く推奨する。
 進行に不可欠というわけではないが、物語に深みを与えるならば、サプリメント『アーカムのすべて』、『ミスカトニック大学』、『インスマスからの脱出』などが役に立つだろう。
 本作にはラヴクラフト作品をベースとしたホラー展開や時代特有の表現が含まれている。その他の要素も人によっては不快感を覚えるかもしれない。遊ぶ前に必ず、プレイヤーの苦手な要素がないか確認すること。あれば適宜描写を控える、改変するなどし、時には中断することを推奨する。改変の際は改変部分を伝えておくとよいだろう。
 また、セッションのトーンを予めプレイヤーと相談し決めておくことも勧める。シリアスなのかコミカルなのか、キーパーの求める世界観やプレイヤーが体験したい冒険の擦り合わせも含めトーンを確認し合うと、プレイの足並みが揃いやすくなる。
 シナリオ作者はセッションにはいない。プレイヤーに最も近く、トークで物語を育むのはキーパーだ。楽しいセッションとなるよう、配慮してほしい。

 


■シナリオ本文抜粋
 探索者がサラのアパートの住人なら、ここから物語は始まる。
 時刻は平凡な夕暮れ時。斜陽が町を鮮やかな橙色に染めるなか、玄関先でアパートの大家サラを住人のトム・ブラウンが捕まえて、なにやら大声で文句を言っているのが目に留まるだろう。ふたりの傍らにはサラの息子エリックがいる。彼は地べたにクラッカージャック(キャラメルポップコーンのブランド)のオマケを並べて遊んでいる。合金製の潜水艦、歩兵などの玩具だ。
 聞き耳をたてずとも、大きく粗野なトムの声は耳に飛び込んでくる。「ボブが夜に叫んで寝られやしない」「いい加減、追い出してくれ」と。サラはトムの意見に首肯し理解を示しつつも、「彼は病気なのよ」と同情しているようだ。
 ボブについては探索者も覚えがある。部屋に閉じ籠っており殆ど顔を見せず、夜驚症なのか最近では夜中にアパート中に響くほどの悲鳴をあげている。彼の絶叫に幾度となく睡眠を妨げられている探索者もいるだろう。
 彼らの会話に加わるなら、エリックは探索者を前に、サラのスカートの影に隠れてしまう。内気なのだ。
 トムは探索者にも愚痴をこぼすだろう。サラとの話は平行線だ。

 突然、探索者は悲鳴を聞くだろう。
「The window! The window! (窓に!窓に!)」
 探索者が玄関先にいたならば、ボブが5階の窓枠を蹴って外へ飛び出す瞬間を目の当たりにする。
 落下するボブの体は2階の壁と玄関口の屋根にぶつかると、通りへ投げ出される。ボブの脳味噌と体液が、砕けた煉瓦とアスファルトシングルの屋根材と共に降り注ぐ。
 探索者には頭上から降り注ぐボブの“中身”から逃れるためのDEXロールのチャンスがある。不運にもボブのアレコレを浴びてしまった探索者は1/1D6の正気度を失い、難を逃れた探索者も1/1D3失う。
 通りへ投げ出されたボブはというと、追い打ちとばかりに馬車に轢かれてしまう。
 探索者は彼のいまわの言葉を耳にするだろう。「DAGON」と。

 辺りは当然、阿鼻叫喚の大騒ぎだ。サラは悲劇を見せまいとエリックを部屋へ連れていき、トムは喚きながらボブの遺体の周りを右往左往する。
 遺体に近づくなら、全身が車輪でズタズタだ。目のよい探索者なら、ボブの右手にある大きなペンだことインクの汚れに気付く。加えて、ポケットからモルヒネの小瓶が転がり落ちていることも。
 間もなく警察がやって来る。サラが通報したのだ。警察は早々に捜査を終えると自殺と判断し、ボブの遺体を回収し立ち去る。
 翌朝、ボブの死は朝刊の角に小さく載るかもしれない。が、世間を賑わせることはけしてない。
 
 数日後にはボブはポッターズ・フィールド(貧困者の墓)に埋葬される。身寄りのない者や貧困者などが埋葬される共同墓地だ。
 彼の両親は既に故人で、親戚とも縁が切れている。必然的に、葬儀は牧師とサラだけの寂しいものとなる。サラは少しでも花を持たそうと、探索者を参列に誘う。
 葬儀の終わったタイミングで、サラはボブの部屋の掃除を探索者に願い出る。費用は払うし、部屋にあるものを駄賃にしてもいいとも付け加える。
 サラはボブの死が夫の死と重なり、陰鬱な思いを抱えている。加え、事件のショックでエリックが赤ちゃん返りをしてしまった。その為、彼女は清掃に消極的だし、なにより手が回らない。

 探索者がアパートの住人ではないのなら、物語はサラの依頼から始まる。
 彼女は探索者のところに喪服姿で訪問し、自身のアパートの住人ボブ・バローズが飛び降り自殺をしたことを語る。そして、ボブが借りていた屋根裏部屋の清掃を依頼する。
 依頼料は5$、加えて、部屋の中に金目のものがあれば駄賃に得てもよいという話だ。
 探索者はこの話に乗ることとなるだろう。

 

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